瀬戸内経済文化圏

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岡山|PEOPLE

下山桂次郎|下山さんちのお茶

お茶がつないでくれた出会いは、岡山らしさにつながった。

高校卒業後、地元を離れてアパレルで働いていた下山さん。茶産地・静岡でお茶づくりを学んだ後、地元岡山県に戻り実家の茶農家を継いだそう。地元のお茶の良さに気づけるようになったのにはきっかけがありました。

―地元に帰って茶農家を引き継ぐようになったきっかけから教えていただいても良いでしょうか。

高校を卒業して洋服屋で働くようになり、店長になって仕事をしていると、別に服じゃなくても良いかなって思うようになって。実家を継ぐことを考えるようになりました。そのために静岡の茶農家さんに弟子入りもして、しばらく住み込みで働いていました。

―静岡はやっぱり規模が違いますよね。

やっぱり大規模だし、なんというかDNAが違うっていうか、お茶を飲むことが生活に染み込んでいました。食卓には必ず急須がありますし。

―静岡でワンシーズン通して体験されていたんですよね。岡山の茶づくりとの違いはどういったことがありますか?

まず原料が違うので、そのまま静岡の作り方を落とし込んでもダメだったんです。だから毎年春に静岡へ通いました。静岡のお茶のスタートは4月で、こちらは5月なので1ヶ月間タイムラグがあるので、向こうで師匠のお茶作って、戻って自分のところの農園でお茶を作るっていうのをずっと続けてきました。その10年間ぐらいでお茶づくりを学んだという感じですね。

―3代目になってから変わったこととかありますか?

一番変わったのは、始めた当初はずっと静岡を追いかけていたのですが、それが無謀だなと気づいたことですね。こっちはこっちの良さがあるじゃんってところを、ちゃんと打ち出せるようになりました。

―特にどういうところですか?

先ほど飲んでもらった番茶は、昔から親しまれているものなので、地域性が出ています。静岡と同じものを作るのではなくて、競合するためにどうしましょうっていうことを考えなきゃなと気づきました。オーガニックのお茶づくりを始めたのもその後とかですかね。まだ販売まではできていませんが、ゆくゆくはオーガニックの認定も取りたいなと考えています。

―パッケージが特徴的ですが、どなたが作られているんですか?

ぼくです。一枚ずつ手書きで作っています。

―そうなんですか!すごい!

そうなんです。最初は注文が月に30個くらいだったんです。それが何千個になっちゃって。書くのが追いつかなくて、注文が入ったら慌てて書いています(笑)

品評会に出すのは辞めた。外とのつながりで見えてきたものって?

―ご実家の農園を引き継がれて何年くらいなんですか?

21歳で帰ってきたので、もう25年くらいですね。最初の10年くらいはお茶の品評会に出したりもしていました。そうしているうちに、岡山アワードという賞が取れて、これをもらってから品評会に出すのはやめました。作元さんみたいなひとたちと出会って、価値観が変わりました。

―このアワードではどんな人が選ばれるんですか?

いろんな分野ですね。建築とか農業、アパレルとか、同業者が推薦するんです。なぜか第一回目の農業部門で僕が選ばれました。

―そこでいろんな交流が生まれたんですね。

レセプションの場でインテリアショップのオーナーとかと知り合って、3日後には取り扱ってもらったりとか、今までとは別の切り口でお茶の扱いが変わったんです。

―どんどん卸を減らして、直接顔が見える人にお渡ししているんですね。

はい。そして県内で知ってくださる方が増えてきて、需要はあるんですけど生産量が追いつかなくて。とはいえ日常でお茶を淹れるっていうライフスタイルがなかなか根付かないから、お店をやりたいなと思っています。ドリンクに変換したら茶葉がたくさんは必要ないし、正解のお茶の味を伝えられるし、スタッフが増えれば、スタッフもお茶を淹れるから、裾野が広がる。

―お茶って作るだけじゃダメで、お茶を淹れられるひとも育成しないといけないですもんね。


岡山の茶産地のこれから

―岡山アワードを取ってから、地域の方達との出会いによって変わったことがあれば教えていただきたいです。

簡単にいうと、岡山愛を持った人に出会えたことですね。地元が嫌いだったけど、岡山を愛してるひとに出会ったことで、そこを学ばないといけないし、その人たちのために「岡山らしいお茶」にしないといけなと思うようになりました。

―今までは出会わなかったタイプの人たちですか?

そうですね。今までは内側しか見れていなかったから、外から「岡山は素晴らしい」って言ってくれて。そこから岡山市内のいろんな方達と販売を通して出会いました。もっと外に出てお茶の美味しさを広めようって思えたきっかけでもあります。今後はお茶の栽培から飲んでいただくところまで整えていきたいですね。あんまり業界に特化したこだわりを見せるのではなくて、お客さんのためになるこだわり方をしたい。それがちゃんと、消費者の方になるべく近い距離に届けるようにできたら一番美しい形だと思ていているので、できたらいいなと思います。

―お茶がいろんな人につなげてくれてる。岡山好きな人たちとの交流が生まれてきた中で、こういうことができたらいいなとかありますか?

お茶染めですかね。新しいお茶の需要を生み出すことと、荒廃茶園を復活させたいなっていう思いで始めたので、もっと作っていきたいです。

下山桂次郎|下山さんちのお茶

江戸時代よりお茶作りが行われている茶産地岡山県美作市海田。Qualitea美作(クオリティーミマサカ)は、その地で三代続く茶農家。 三代目茶師の下山桂次郎が、素朴で優しいお茶をコンセプトに手掛ける「下山さんちのお茶」は煎茶を中心に約10種類の商品を展開。 下山さんちのお茶は、自家栽培自家製造の厳選された茶葉のみを使用した本格日本茶を、アパレル、インテリアショップ、雑貨屋などで展開し、新しい形で日本茶を提案。
岡山県美作市海田1962 →https://qualitea.jp/