瀬戸内経済文化圏

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徳島|PROJECT

Food Hub Project

地元と地元。生産者と消費者。小さいものと小さいものを「つなぐ」。

高齢化と後継者不足が深刻な徳島県・神山町にて、新規就農者を増やすことを軸に、自ら育てた野菜や地元の特産品を利用する食堂『かま屋』と、パンと食品の店『かまパン&ストア』(食パンとカンパーニュが最高です!)を営むフードハブ・プロジェクト。地元で採れた素材を地元で消費。地産地食で小さな生産者と町の人々を「つなぐ」プロジェクトには、これからのスタンダードがあるような気がする。

―フードハブプロジェクトは4 つの部門から形成されています。地域に伝わる農業と食文化をつなぐ農業者を育成する「育てる」部門。神山町の食文化を受け継ぐ「つくる」部門。地域の農産物を利用した食堂・パン・食品店を運営し、食べて支える「食べる」部門。最後は学生たちに地域の農業のことを教えながら教育も実施する、最も大切な次の世代に伝えることを担う「つなぐ」部門。真鍋さんは現在、どの部門でどのような事を担当されているでしょうか?

支配人という肩書きもあるので、基本的にはすべての部門に関わっていますが、「つなぐ」部門での業務が主です。一番大きなのは近くの高校に、『環境デザインコース』と『食のプロデュース』の2コースを設立し、授業のサポートを行っていることです。

―学科改正から行ったのですか!?

はい。カリキュラムなども学校と一緒に作っています。あとは、文化祭で『お弁当プロジェクト』というのを毎年実施していて、これは自分たちの町の素材でどれくらいのお弁当が作れるかという取り組みで、実際に産食率(≒自給率)という数字も出し、調理から販売までを生徒たち自身でやっているんです。

―一気に、地元素材への愛着が湧きそうですね。そして、効率良く「つなぐ」意思を伝えられそうです。

他にも色々な取り組みはありますが、どれも生徒自身や先生からアイデアが出てくるんですよ。そんな中で私たちが行っているのは、講師(地元の生産者の方)を招致したりなど、あくまでサポートなんです。神山町ではないですが、似たような取り組みを尾道の高校とも実践していて、尾道駅にローカルファースト!(まずは地元から)をコンセプトにした「せとうち巻き」というおにぎりを作りました。キャンディのようにご飯を海苔で包んだ地元漁師たちが食べていたおにぎりで、中身は地元の素材をたっぷり使ったアイデアを生徒たちに出してもらいました。

―スイーツなど、もっと流行的な品でも良いと思うのですが、なぜおにぎりだったんですか?

地元の食材を知るという事と、もう一つは日常の食育。駅なのですぐ目の前に安く買えるコンビニがあって、地元素材の品を買うか、大量生産品を買うか。日常的に選択を迫ることで地元の価値を見出すことができるのではないかと考えています。これは正解を出すことが目的ではなく、考えることに意味があると思っています。ちなみに売り切れることも多々あるようです。

―確かに。食に限らずモノで溢れる日本だからこそ考える力は養いたい。これも着実な「つなぐ」一歩ですね。そもそもですが、「つなぐ」という部門はなぜ生まれたのでしょうか? 美味しい野菜があるなら、食堂や食品店だけで充分成り立つと思うのですが。

後から考えた部門ではなく、フードハブ・プロジェクトの始まりが「つなぐ」なんです。現在の素晴らしさを伝えられたとしても、後継者がいなければいずれ終わってしまいますよね。あと、農業長の白桃が立ち上げ時のワーキンググループで言った「小さいものと小さいものをつないでいく」という言葉も鍵になりました。食堂のご飯やパンにしても、生産者は出口が見えるからやりがいを感じられるし、緊張感も与えてくれる。そうすれば自ずと美味しいが作られていく。だから「つなぐ」というのは私たちのエンジンなんです。

―伝統を受け継ぎ、つなぐ一方で『シェフ・イン・レジデンス』のような、第三者を招致する、新たな発見を目的としたイベントもありますよね。この意図は?

フードハブ・プロジェクトは地元を掘り下げてゆく日常の活動がすべてですが、ぼんやりとそれだけでは足りないとずっと感じていて。地元の方々や私たちにとっても非日常からの刺激は大事だなと。

―これまで3 人のシェフが滞在しました。どのような効果が見られましたか?

作品(トマトソース)を残してくれたシェフもいたし、「食べる」部門の調理スタッフは、技術や知識の面で多くのフィードバックがあったように思います。特に地元の農業高校に入学し、料理人を志してフードハブでもアルバイトをしている子がいるのですが、彼はブルックリンからやってきたシェフ、デイブの弟子になったんですよ。デイブが帰るときに「一緒に行く?」みたいな内容を発言していたので、いずれ留学してしまうかもしれませんね。

―勝手に留学プログラムが出来上がってしまった!

そうなんです。将来、彼がブルックリンへ行き、ここへ戻って来て何かを残してくれたら継続的な「つなぐ」が生まれますね。

―それ、すっごく素敵だ…ドラマみたいな展開です。

これまでの話を聞きながら、イベントだけでなくフードハブ・プロジェクト全体の取り組みが全国へ広がれば素晴らしいなと、当然思わされたのですがゴールとして考えていますか?

もちろん理想だと思いますが、まずは神山町でより深めて行くことが大事ですね。でも、いずれは広げていきたいと思っています。

Food Hub Project

IT 企業のサテライトオフィスや徳島県の名産品であるすだちで有名な神山町にて 2016 年4 月に設立。2017 年3 月に食堂『かま屋』とパンと食品の『かまパン&ストア』 をオープン。神山町役場、神山つなぐ公社、株式会社モノサスが共同で立ち上げた、 農業を次世代へつないで行くための農業の会社。 tel.088-676-1011  徳島県名西郡神山町神領字北190-1 →http://foodhub.co.jp/

兵庫|PROJECT

種はおよぐ -食と里のつながり-

神戸の里山、海、街をつなぐ新しいネットワークをじわじわと構築中。

神戸市といえば、三宮を中心とした街のイメージが強いけど、自然豊かな農村エリアも、漁業を続ける漁港だってある。意外とそれって神戸に暮らす人でもあまり認識していないかもしれない。外から神戸を訪れる人も気づかず、素通りしちゃってるかも。 これはもったいない! というわけで、ひとつのプロジェクトがこの春、立ち上がります。

―なんと、このプロジェクトのリーダーを務めるのがイラストレーターの山内庸資さん。

行政の担当者からお願いされて引き受けたことですけど、僕が普段から感じていることにも一致したというのが大きかったですね。

―というと?

神戸では、三宮を中心とした都心部の開発がこの先も続きますけど、僕自身は三宮より西側の街、住宅街が面白いと思って暮らしていて、都心部だけが神戸じゃないよって気持ちはあるんです。長田の街にも長く住んでましたけど、震災復興関連のテレビ番組で“震災から学ぼう”といった趣旨で、長田の復興再開発は失敗だったみたいな総括をされてるのを見て、すごく腹が立って。そうやって勝手にレッテルを貼られる長田だけど、いい街だと思って実際にみんな生活をしてるわけだし、自分も住んでる地域をよくすることから何かやっていきたいとは思ってました。イラストレーターなんですけどね(笑)。

―いわゆる神戸ブランドとして確立されてきたイメージもあるけど、それで見えなくなっているリアルな神戸の面白さもありますよね。

そうなんです。僕が神戸市の西区で育ったのもあって、神戸のいろんな魅力を広く、神戸に暮らしている人も含めて、もっと知ってほしいという気持ちは以前から持ってました。とはいえ、別に「みんなで神戸に住もう!」とまでは思ってなくて、こんなにいい店あるよ、いい街あるよくらいの気軽な感じですけど。

―そんな思いからスタートする「種はおよぐ -食と里のつながり-」、具体的にはどんなことが行われるのでしょう。

ウェブサイトを立ち上げるのは間違いないことですけど、僕を含めて関わっているクリエイターたちが考えながら、試行錯誤をして進めていこうと思っていて、そもそもプロジェクト名自体、ずっと仮名のままで進めてきました。結果をすぐに求めないというのかな。そうやってゆるやかに関わりを増やしていくというのが、実は重要なんじゃないかなと思っています。

―プロジェクトの助走作業として勉強会を行ってきたそうですね。

『「食」と「里」の交流会』という名前で、北区の淡河町(おうごちょう)、弓削(ゆげ)牧場に、徳島の神山や岡山の西粟倉でハブになって活動している人たちを招いて話を伺いました。神戸以外の地域の活動を参考にしながら、淡河や弓削牧場も面白いことをやっている場所なので、そこに人が集まる機会をつくって。これからどうすればいいかをディスカッションしています。

―その交流会はこれからも行われるのでしょうか?

はい。なぜか注目度が高くて毎回、定員いっぱいまで人が集まってますけど、一般にも公開しているイベントですし、立ち上げるウェブサイトでレポート記事も公開予定です。

瀬戸内経済文化圏とも重なるところも少なくない「種はおよぐ -食と里のつながり-」プロジェクト。神戸の里山暮らしの今がより深く見えてくるものになりそうなので、相乗効果でさらなる広がりが生まれることを期待します。

文:竹内厚 写真:片岡杏子

種はおよぐ -食と里のつながり-

農村地域が広がる神戸市北区、西区、漁港を抱える海辺の須磨(すま)区、垂水(たるみ)区、そして、観光地や商業地として各地から人を集める神戸市中心部。その間のネットワーク、人の行き来がより活発になることを目指しています。→tanewaoyogu.com