瀬戸内経済文化圏

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岡山|PROJECT

STAND Project

瀬戸内のゲートシティ・岡山の小さな交通。

岡山は瀬戸内の玄関口。四国と本州を結ぶ瀬戸大橋をはじめ、山陽道も西は中国・四国・山陰へつながり、東は関西以東へ。ターミナルの岡山駅は東海道新幹線の主要駅であり、日本一始発の多い駅としても有名です。

多くのひとが行き交う岡山のまちなかは、いま、回遊性の高い“小さな交通”が充実しつつあります。昔ながらの路面電車が市街を網羅し、河川から瀬戸内海の島々につながる定期船も。また岡山市コミュニティサイクル「ももちゃり」は全国有数の回転率を誇る自転車ライクなまちでもあります。

そんな岡山のプロジェクトは、シファカの『STAND Project』です。

「STAND」はcifaka.incが経営するテイクアウト専門のコーヒースタンドです。そして「STAND」最大の特徴は、両店舗とも「ウォーキングバイシクル」のレンタルを行っていること。ウォーキングバイシクルとは自転車とは外観も機構も異なるまったく新しいタイプの乗りものです。→https://walkingbicycleclub.com/

立ち乗りなので目線は自転車よりも高く、徒歩よりも早く進みます。新鮮な目線でまちを楽しめるウォーキングバイシクルに魅力を感じたcifaka.incは観光と交通の要所にある「STAND」2店舗でレンタルをはじめました。

そんな岡山で10月14日『瀬戸内経済文化圏 OPEN SUMMIT 2019 in 岡山芸術交流パブリックプログラム-瀬戸内海各地の活動から未来を考えるシンポジウム-』のイベントが行われました。

 “小さな交通”をテーマに今、岡山で起きていることや瀬戸内でできることなどが話し合われました。

左から、大阪/服部滋樹(graf)、原田祐馬(UMA/design farm)福岡/白水高広(うなぎの寝床)岡山/作元大輔(cifaka.inc)
ゲスト/石原達也(NPO法人岡山NPOセンター) 撮影 兵庫/岩本順平(DOR)

例えば、福岡の「うなぎの寝床」は、6年前から店舗にレンタルキックボードを置き、今年からうなぎの寝床が出資する筑前町の自転車メーカー『Bike is Life』がつくる自転車を利用したレンタサイクルを始めたそう。「うなぎの寝床」は地元・八女でつくられたものが多々あり、自転車があると、つくり手のところへすぐ訪ねることができます。「うなぎの寝床」にとって、自転車はつくり手とユーザーをつなぐ手段のように感じました。効率性や交通手段が第一の目的ではない乗りものには「楽しい目的」が必要です。

KENBI OSAMPO MAP

cifaka.incでも「OKAYAMA OSANPO MAP」を制作し、ウォーキングバイシクルに乗る「楽しい目的」づくりのお手伝いをしています。

岡山の公共のあり方にこれからのヒントがある。

そして交通はインフラ公共です。今イベントでプレゼン登壇したNPO法人岡山NPOセンターの石原達也さんは公共のあり方に風穴を開けた第一人者。自ら「仕組み屋」と名乗り、地域でなにかはじめる人のための組織を運営しています。

上山集楽みんなのモビリティプロジェクト
おかやまケンコー大作戦

「隣人が幸せでなければ、自分も幸せではない」をモットーに、社会課題の解決をまちの当事者と話し合って「事業化」します。事業化(=経済価値を生む)しなければ、持続可能ではないからです。石原さんは「みんなのためのこと=公共なのに、行政のすることにしか税金が使われないのが不思議だった」といい、岡山のまちやひとが楽しく暮らすための経済循環を円滑に回す役目を担います。

昔はみんな百姓で利害一致していたことからコミュニティが協力しあって暮らしていたけれど、今は仕事も暮らしも多様化・細分化しています。各々暮らしの共通項が減ったからこそ「自分のできること」を「他人と分かち合う」関わりしろが必要です。

いま、石原さんを中心に、岡山の公共は他人任せのお役所仕事から、みんなで関わる経済活動に変わりつつあるのです。

瀬戸内海は生活動線の海。暮らすことの延長線上に移動がある。

2人目のゲストは雑誌『せとうち暮らし』の小西智都子さん。瀬戸内海に面した高松市や周辺の島々ならではの紹介、体験プログラムの企画、それらをもとにした「瀬戸内スタイル」の提案などを行なっています。「瀬戸内海は生活景観」と呼び、瀬戸内のツーリズムに一石を投じる新事業についてお話を伺いました。

江戸時代の北前船をはじめ、瀬戸内海は日本最古の海の道でした。高度成長期を経て、車・汽車から電車、新幹線、そして飛行機と、ひとの移動手段のスピードを早くなる一方で、瀬戸内の良さを味わう余白が失われていることを知ります。

瀬戸内海の愉しみかたを知り尽くした小西さんの提案は「船旅の復活」。「スピードが早いと見えないものがある。瀬戸内はその見えていないものに価値がある」そう小西さんは言います。

ウォーキングバイシクルをはじめ、岡山のまちに「スピードを緩める」機能が備わったのは時代の必然なのかもしれません。

IF THE SNAKE, Okayama Art Summit, 2019
Pamela Rosenkranz, Healer (Waters), 2019
Courtesy of the artist, Karma International, Miguel Abreu Gallery and Sprüth Magers
Photo: Ola Rindal

そして、3年に1度岡山で開催される現代アートの大型国際展覧会「岡山芸術交流」が開催が終わったばかり。観光地である岡山城・後楽園周辺エリアの主な会場を舞台に芸術と岡山のまち歩きを楽しむイベントです。岡山はマルシェの開催も多く「移動の目的」を自ら作り出すまちになりつつあります。

暮らしの最適化は時代によって変化する。

『STAND Project』の責任者、cifaka.incの作元さんは「自分が生活している岡山の風景として、移動手段のあり方の目線で事業することが目標。日常の交通に興味がある」と言います。

それは息を吸うように「ちょっとそこまで」ウォーキングバイシクルを使うようなニュアンス。今は「特別」でも、いつか「日常」を目指したい。確かにウォーキングバイシクルを、普段づかいでまちなかで見かける日常はとてもおおらかで豊かな気がします。

人々に新しい景色を見せてくれるウォーキングバイシクルという存在が、岡山のまちで「当たり前」の風景になったら、瀬戸内の経済も文化も新時代を迎える気がしてなりません。そして暮らしの利便性としての交通と暮らしを豊かにする交通は別のものであることに瀬戸内は気づきはじめています。

STAND Project

岡山県の県庁所在地である岡山市街の中心にあるカフェ『STAND』。交通の要所にある岡山市北区野田屋町のSTAND1-1と、岡山城をのぞむ旭川ほとりにあるSTAND6-10。TO GOのコーヒースタンドであり、「ウォーキングバイシクル」のレンタルも行う。 →https://stand.cifaka.jp/